未成年者・胎児・障害者がいる相続の場合
相続人に未成年者がいる場合
・相続人の中に未成年者がいる場合、未成年者の相続人は「遺産分割協議」に直接参加することはできません。
・この場合、未成年者の「親など親権者」や「後見人」が、未成年者の「法定代理人」として遺産分割協議に出席する必要があります。
・しかし、父が亡くなり、母と子(未成年者)が相続人になるなど、親自身が相続人であるときは、法律的に子と母の利益は相反しているので、母は子の代理をすることはできません。
・遺産分割は利害を伴うので、利益の相反する者が代理人になって、自分と被代理人(未成年の子)の両方の取り分の取り決めをすることは許されていないのです。
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控除額=10万円×(20歳−相続した時の年齢)
※この場合の年数に1年未満の端数があるときは、切り上げて1年として計算します。例えば、相続人の年齢が10歳5か月の場合、20歳までは9年7か月ですので、切り上げて10年として、控除額は100万円になります。
・胎児の未成年者控除については、「生きて生まれた場合に200万円の未成年者控除」が認められます。
・令和4年4月1日より、未成年者控除は、「18歳未満の相続人」が対象になる。
民法5条
・未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
・「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」とは、「贈与を受ける場合」や「債務を免除される」ことを指しており、このような場合には法定代理人の同意は必要ない。
・未成年者が「負担付贈与」を受ける場合には法定代理人の同意を必要とするのだろうか。負担付贈与は場合によっては、負担の方が大きい場合があるので、法定代理人の同意を必要とする。
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相続人に胎児がいる場合
・民法では、相続人の判定に関して、夫が亡くなったときに妻が妊娠していた場合、胎児は既に生まれたものとみなされる(当該胎児が死体で生まれたときを除く。)とされておりますが、実務上では、相続人である「胎児が生まれる前に遺産分割協議は出来ない」とされている。
・そして、胎児であることの不安定性に配慮した、出生時までの間、「遺産分割の延期、又は禁止の手続き」を採ること等の実務上の対応策が考えられている。参照ペ−ジ
・「死産」であればみなし規定が適用されず相続はしない。この場合戸籍には載らないが、数時間でも生きていれば戸籍が作成され、存在したことになる。
・民法の取扱とは異なり、相続税の申告書の提出日までに出生していない相続人となるべき胎児については、これを「法定相続人の数には算入しない」ものとして相続税額を計算するものとされている。
・一旦、胎児を除いたところで相続税の申告をし、胎児が生まれてから、「更正の請求」をすることになる方法、とりあえず「未分割として胎児を含めない法定相続による申告等」も考えられる。
・相続開始の時に相続人となるべき胎児があり、かつ、相続税の申告書の提出期限までに生まれない場合には、「当該胎児がいないものとして相続税の申告書を提出」することになるのであるが、当該胎児が生まれたものとして課税価格・相続税額を計算した場合において、「相続税の申告書を提出する義務がなくなるとき」は、その提出期限を「2カ月延長」することができる。
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法定代理人の選任
・夫が先に亡くなり、未成年者の子供が祖父の相続財産を代襲相続するような場合には、母親と未成年者の子供が、利益相反とはならないため、母親が未成年者である子供の「法定代理人」になる。
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・「法定代理人」の場合には、下記の「特別代理人」ではないので、家庭裁判所に届け出る必要はない。
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特別代理人の選任
・遺産相続において、未成年者と親権者(または後見人)の「利益が相反するケース」は2通りあります。
2.複数の未成年者がいて、親権者(または後見人)が共通である場合 |
・こういう場合には、親権者(または後見人)は、「家庭裁判所」に未成年者の「特別代理人」の選任を請求しなければなりません。
・具体的には、夫が被相続人で妻と子(未成年者)が相続人ならば、妻は子の特別代理人の選任を申立て、妻と特別代理人の二人で遺産分割協議をおこないます。
・子が二人いて共に未成年者のときは、「特別代理人を2人」たてて、妻と特別代理人2人の計3人でおこないます。他に、「被成年後見人と成年後見人」の場合 参照ペ−ジ
申立てに必要な書類
1.申立書1通 申立人(親権者)
2.未成年者の戸籍謄本各1通
3.親権者、又は未成年後見人の戸籍謄本
4.特別代理人候補者の戸籍謄本、住民票各1通
5.利益相反行為に関する書面(遺産分割協議書の案(遺産分割協議
の場合)、金銭消費貸借、抵当権設定契約書等の案、不動産登記簿
謄本(抵当権設定の場合)、不動産の資産証明書など
・親権者の死亡等のため未成年者に対し親権を行う者がない場合に、家庭裁判所は、申立てにより、未成年後見人を選任します。 未成年後見人とは、未成年者(未成年被後見人)の「法定代理人」であり、未成年者の「監護養育」、「財産管理」、「契約等」の法律行為などを行います。
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記入例はここをクリック
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相続人に認知症・知的障害者がいる場合
・相続人に「認知症」や「知的障害者」など"意思能力を欠いた"人がいる場合も、本人を直接相続分割協議に参加させることはできません。
・そのような相続人が参加した「遺産分割は無効」になります。
・これらの人に対しては、家庭裁判所に後見人の選任の申立てをし、「成年後見人」が本人(被成年後見人)の代理人として遺産分割協議に参加します。
・なお、認知症や知的障害者本人や家族は、将来を考えてあらかじめ信頼できる人と任意に後見契約を結び、「任意後見人」を立てておくことをおすすめします
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・一般障害者の場合
控除額=10万円×(85歳−相続した時の年齢)
・特別障害者の場合
控除額=20万円×(85歳−相続した時の年齢)
※相続した時の年齢に1歳未満の端数がある時は切り捨てる。20歳9カ月の場合には20で計算。
相続人本人から税額控除が出来ない場合
・未成年者・障害者である相続人本人から税額控除が出来ない場合には、「扶養義務者の相続税額から控除」することができる。
* * * 相続税法における扶養義務者の範囲 * * *
・相続税法における「扶養義務者」とは、法第1条の2第1号に「配偶者及び民法に規定する親族をいう。」と定義されている。
・この民法877条に規定する親族とは、「直系血族」、「兄弟姉妹」及び「家庭裁判所によって扶養義務を負わされた三親等内の親族」(配偶者、直系血族及び兄弟姉妹を除く。以下この項にて同じ。)をいう。
・したがって、単なる三親等内の親族で生計を一にする者は、扶養義務者に当たらないのであるが、三親等内の親族といえどもいわば、おじ、おいという間柄であって、一方が生活に困っている場合又は債務の弁済に困っている場合などには、たとえ家庭裁判所の審判は受けていなくても、それを扶助することは実際に多いようである。
・未成年者・障害者である「扶養義務者の相続税額から控除」については、未成年者・障害者が「相続や遺贈」により財産を取得していることが前提になっているので、未成年者・障害者が何も相続・遺贈していない場合には、適用がない。
・間違える場合が多い。未成年者・障害者が1円でも相続・遺贈すれば適用がある。
・また、扶養義務者への障害者控除を適用する際には、障害者と他の相続人などの間で「同居する」ことや「生計を一にする」ような実際に扶養している事実は求められていない。
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・そこで、相基通1の2−1は、このような実情を踏まえ、「三親等内の親族で生計を一にする者」については、家庭裁判所の審判がない場合にあっても、「相続税法上、扶養義務者に該当する」ものとして取り扱うこととしたものである。
・なお、上記扶養義務者に該当するかどうかの判定時期は、相続税にあっては「相続開始の時」、贈与税にあっては「贈与の時の状況」によることを留意的に明らかにしたものである
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代償分割と未成年者控除・障害者控除
・未成年者及び障害者が相続により、「不動産等の財産を取得した場合」には、財産管理の関係から難しい問題が生ずるので、財産を相続しない方がよいと、心配する見方もある。
* * * 代償分割の活用 * * *
・これを解消する方法として、「代償分割」がある。
・配偶者が子供たちに相続分の代償として現金などを支払うという代償分割を利用することで、子供たちは財産を取得することになるので、未成年者控除及び障害者控除を受けることができる。
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養子縁組と未成年者控除・障害者控除・生命保険金非課税規定
・実子がいても、複数の者と養子縁組をすることにより節税効果が得られる場合がある。
・養子が未成年者や障害者であれば、複数の養子全員が「未成年者控除」又は「障害者控除」の適用を受けることができる。
・複数養子においても、当該養子が受け取った生命保険については生命保険金の非課税規定の適用を受けることができる。
・つまり、「法定相続人の数」において制限される養子は、数の制限を受けるだけで、身分関係を否定されるものではないので、相続人に該当し、「非課税とされる金額の配分を受ける」ことができる。
参照ペ−ジ
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