遺産分割の禁止             


   遺産分割の禁止

民法908条

・相続に際して、被相続人は遺言で、「相続開始の時から5年を超えない期間」を定めて、遺産の分割を禁止することを定めることができます。

解          説


民法907条

・遺産分割協議において共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときに、共同相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求することができますが、この場合、
「特別の事情があるとき」は、「家庭裁判所」は、期間を定めて遺産の全部又は一部について「分割を禁止」することができます。



・一方、民法は分割の時・方法などについては共同相続人の意思に基づくことを認めていることからも、「共同相続人が協議によって遺産分割を禁止」することも認められます。



   遺産分割を禁止するのが適当なケース

・相続人や遺産の範囲が確定しない場合や、相続財産の種類又は性質上直ちに分割するのは控えた方が共同相続人の利益になると考えられる場合です。

①相続人として
「胎児がいる場合」

相続税基本通達15-3

・民法の取扱とは異なり、相続税の申告書の提出日までに出生していない相続人となるべき胎児については、これを「法定相続人の数には算入しない」ものとして相続税額を計算するものとされている。

相続税法基本通達27-6(胎児がある場合の申告期限の延長)

・相続開始の時に相続人となるべき胎児があり、かつ、相続税の申告書の提出期限までに生まれない場合には、
「当該胎児がいないものとして相続税の申告書を提出」することになるのであるが、当該胎児が生まれたものとして課税価格・相続税額を計算した場合において、「相続税の申告書を提出する義務がなくなるとき」は、その提出期限を「2カ月延長」することができる。


②共同相続人中に
「行方不明」ないし「生死不明」の者がいる場合

「遺産の範囲」について争いがある場合、

④遺産の状態が
「債務を整理した後」でないと分割に値しない場合等


分割禁止の登記

・遺産分割の禁止がなされると遺産分割が一時延期されることになると考えられています。そして、分割禁止期間経過後に改めて遺産分割手続きを行うことになります。

・また、分割禁止の合意をしても、不動産については、
「分割禁止の登記」がない場合には、その不動産を譲り受けた者に対して、分割の禁止を主張することができないと解されています。