・農地については、農地法等により宅地への転用が制限されており、また、都市計画等により地価事情も異なりますので、税務上はこれらを考慮して、農地の価額は次の「四種類」に区分して評価します。
※ 原則として農地は、都道府県知事の許可がないと、転用や譲渡はできません。
・純農地とは、次に掲げる農地のうち、そのいずれかに該当するものをいう。ただし、≪市街地農地の範囲≫に該当する農地を除く。(財産評価基本通達36)
(1) 農用地区域内にある農地
(2) 市街化調整区域内にある農地のうち、「第1種農地 (参照ペ−ジ)」又は「甲種農地」に該当するもの
(3) 上記(1)及び(2)に該当する農地以外の農地のうち、第1種農地に該当するもの。ただし、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第2種農地又は第3種農地に準ずる農地と認められるものを除く。
・中間農地とは、次に掲げる農地のうち、そのいずれかに該当するものをいう。ただし≪市街地農地の範囲≫に該当する農地を除く。(財産評価基本通達36−2)
(1) 「第2種農地」に該当するもの
(2) 上記(1)に該当する農地以外の農地のうち、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第2種農地に準ずる農地と認められるもの
* * * 相続評価 * * *
・純農地及び中間農地の評価は、「倍率方式によって評価」します。 倍率方式とは、その農地の固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を乗じて評価する方法をいいます。(財産評価基本通達37、38)
・純農地よりも「農業政策上の規制が少なく、売買の可能性が高い農地」をいいます。具体的には次のいずれかに該当するものになります。
1、市街化調整区域内にある農地のうち、調整区域許可基準に定める乙種農地のうち、第2種農地に該当するもの。
2、前記以外の農地のうち、農地転用許可基準に定める第2種農地に該当するもの。
3、その他の農地のうち、第2種農地に準ずると定められているもの。なお、中間農地の価額は、純農地の場合と同じ方法で評価されます。
・相続税申告に際し、市街化調整区域内に存在する農地が純農地に該当するのか中間農地に該当するのかを確認する場合、農業委員会に対し「農用地確認・除外等相談カ−ド」を発行してもらっている。「農用地区域外」と回答された土地については、中間農地の倍率を使用する。
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・市街地周辺農地とは、次に掲げる農地のうち、そのいずれかに該当するものをいう。ただし、36−4≪市街地農地の範囲≫に該当する農地を除く。(財産評価基本通達36−3)
(1) 「第3種農地」に該当するもの
(2) 上記(1)に該当する農地以外の農地のうち、近傍農地の売買実例価額、精通者意見価格等に照らし、第3種農地に準ずる農地と認められるもの
* * * 相続評価 * * *
・市街地周辺農地の評価は、その農地が市街地農地であるとした場合の価額の「80%に相当する金額」によって評価します。 (財産評価基本通達39)
・市街地農地の評価に対し20%減額しているのは、「宅地転用が許可される地域の農地」ではあるものの、まだ現実に許可を受けていないことを考慮しています。
・宅地転用するには、「宅地転用の許可」が必要である。
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・市街地農地とは、次に掲げる農地のうち、そのいずれかに該当するものをいう。(財産評価基本通達36−4)
(1) 農地法第4条≪農地の転用の制限≫又は第5条 ≪農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限≫に規定する許可(以下「転用許可」という。)を受けた農地
(2) 市街化区域内にある農地
(3) 農地法の規定により、「宅地転用許可を要しない農地」として、都道府県知事の指定を受けたもの。「届出」だけで宅地転用が可能である。
* * * 相続評価 * * *
・市街地農地の評価は、「宅地比準方式」又は「倍率方式」により評価します。宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の価額からその農地を宅地に転用する場合にかかる「造成費に相当する金額を控除」した金額により評価する方法をいいます。(財産評価基本通達40)
これを算式で示すと次のとおりです。
・上記算式の「その農地が宅地であるとした場合の1u当たりの価額」は、具体的には、路線価方式により評価する地域にあっては、その路線価により、また倍率地域にあっては、評価しようとする農地に最も近接し、かつ、道路からの位置や形状等が最も類似する宅地の評価額を基として計算することになります。
・また、「1u当たりの造成費の金額」は、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに、国税局長が定めています。
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・市街地農地等とは、「市街地農地」、「市街地周辺農地」、「市街地山林」、「市街地原野」の4つを含んでいる。
貸してある農地の評価
・農地法にいう「耕作地」とは、農地法第2条第2項で「耕作の事業を行う者が所有権以外の権原に基づいてその事業に供している農地をいう」とされている。
・農地に賃借権等の権利を設定するためには、農地法第3条の定めるところにより、「農業委員会の許可」を受けなければなりません。
・農地法の許可を受けて小作地を耕作する者(耕作権者)は、その地位、権利を保護されるが、農地法の許可を受けていないものは「耕作権」には該当しません。
・農地の所有者が、当該土地を利用するために耕作権者に支払う立退き相当金を「離作料」と呼んでいる。
※「永小作権」は、小作料を払って他人の土地で耕作または、牧畜をする権利。
・永小作権は、賃借小作権とは違い、物権であるから排他性を持ち、土地の所有権者の意思に関わらず自由に処分をすることができる。当然登記によって第三者に対抗することができ、相続も可能である。
・農地法の許可を受けていない耕作権は、「ヤミ耕作」といい、評価の対象にはならないため、自用地評価となるが、ただ耕作している人は耕作している「農作物の収穫権」はあるため、収穫の時期までは耕作を続けてもらうことになるので、多少の評価減は可能
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耕作権の評価
農地の価額×耕作権割合(50%)
農地の価額×耕作権割合※
※離作料の額、借地権の価額等を参酌して求めた価額により評価します。
※「離作料の額」等が不明な場合には、その農地の価額に各国税局ごとに定められた一定の割合を乗じて計算した価額によって評価しても差し支えない。
東京国税局・・・・100分の35 名古屋国税局・・・・・・・100分の40
大阪国税局・・・・100分の40
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永小作権の目的となっている農地
・農地の自用地としての価額−永小作権の価額
区分地上権の目的となっている農地
・農地の自用地としての価額−区分地上権の価額
耕作権の目的となっている農地の評価(農地法施行前)
・被相続人は農地を所有していたが、昭和20年からこの農地を賃貸していた。このような場合の評価はどのようになるのか
解 説
・耕作権、永小作健等の目的となっている農地の評価は、次に掲げる区分に従い
1.耕作権の目的となっている農地の価額は、37(純農地の評価)から40(市街地農地等の評価)までの定めにより評価したその農地の価額から、42(耕作権評価)の定めにより評価した耕作権の価額を控除した金額によって評価する。
・賃借権の設定等について許可又は承認が必要とされることとなった昭和21年11月22日前に賃貸借された農地の賃借人は、農地法施行(昭和27年10月21日)後に改めて農地の賃借権の設定等に係る許可を要することはなく、
・又、その後賃借人に相続が開始した場合には、その相続人は、その賃借権を適法に承継したものと扱われることから、かかる賃借権は、その解約等を行う場合、農地法18条1項の規定により、都道府県知事の許可が必要であることから、同法の保護を受ける賃借権、つまり財産評価基本通達9の(7)の耕作権に該当することになる。
・従って、昭和21年11月22日前に賃貸借が開始された農地については、自用地としての価額から財産評価基本通達に定める耕作権の価額を控除して評価する。
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