成年後見制度とは             
  


成年後見人の仕事

・成年後見人の仕事は、主に「生活支援」「財産管理」であるが、最高裁判所のデ−タによれば、成年後見申立の動機の70%近くが「財産管理」と「遺産分割協議」とされる。

・「財産目録の作成」、「生活プランの作成」、「裁判所への報告」などを行う。


「生活支援」とは、介護施設と契約したり、治療や入院手続きなどを行うこと。高齢者が適切な介護が受けられるように身上配慮が重要な活動。

・社会福祉士は、利用者の権利擁護の立場から福祉全般にわたって助言、指導するのが本業で生活全般に立ち入ることができる。そこで成年後見人として注目されている。

「財産管理」は、預貯金、不動産などを含む財産を適正に管理すること。従って、被後見人所有の不動産の売却や利殖目的のリスク商品の売買は成年後見人を監督する家庭裁判所が認めないことが多い。




  成年後見制度とは



・成年後見制度とは、平成12年4月、介護保険制度と同時にスタ−トした従来の禁治産、準禁治産制度に代わる新しい後見制度です。


・従来の心神喪失者、心神耕弱者だけでなく、高齢に伴う痴呆により意思能力がなくなったり、 不十分になったりした人達を対象としています。

・新しい成年後見制度では、社会福祉法人のような
「法人も後見人になれる」ことが明記されています。そしてそれは、「継続性の面」で個人の後見人よりすぐれていると言われています。

・後見人は、被後見人に代わり老人ホ−ムなどへの入居契約やアパ−ト入居の際の賃貸借契約など
「法律行為の代行」を行います。

・本人が結んだ契約についても
「取消し」もできる場合がある。

・本来であれば、特別養護老人ホ−ムの入居契約にあたって、「契約内容が理解できない認知症の入居者には後見人」が必要です。その契約書に家族が署名すると「私文書偽造になる」と法曹関係者は指摘しています。

・社会福祉法人が入居者の後見人になった場合、サ−ビス提供者と後見人が同一法人になるので、客観性を保つ上で
「後見監督人」が必要になると言われています。



  成年後見人選任の申立


          成年後見人選任の申立の流れ
(1)医師の診断書の取得

・診断書に、「本人は意思表示が出来ない」旨を明確に記入してもらうことが大切である。

・この診断書で意思表示が出来ないことが明確に判断できれば、次の「医師の鑑定」は必要なくなる。
(2)医師の鑑定について
・家庭裁判所からの「鑑定の依頼」に応じる医師が少ないため、6カ月程、時間がかかる。

・費用が10万円ほど掛かる。
(3)本人の財産の把握と月別の収支の把握
・預貯金が4,000万円以上存在する場合には、成年後見監督人として弁護士、司法書士、行政書士等が選任されるケ−スが多い。

・監督人は、財産目録の提出、収支報告書の作成が義務付けされる。監督人には、毎月1万5千円〜3万円の報酬を支払うことになる。
(4)必要書類の収集
・本人及び申立人の戸籍謄本及び住民票、

・本人の診断書、及び登記されていないこと
(被後見人としての登記)証明書。

「被後見人として登記されていないこと証明」については、本人しか謄本を取得することができないので、委任状により司法書士に依頼するケ−スが多い。
(5)家庭裁判所への申立時の注意点

・成年後見人選任の申立には、後見人となる人との面接があり、被後見人の様子や後見人となる方が後見人制度を正しく理解しているか等を聞かれる。

・親族の反対など相続争いの火種があると、第三者の専門家が選任される場合もある。

(6)成年後見監督人の選任
       ・預貯金4千万円を超える場合には、「成年後見監督人」が選任される。
(7)審判が下りるまでの期間
       ・審判には、約2〜3カ月くらいかかる。



  「任意後見」と「法定後見」があります


1.任意後見

・新しい制度の1つに、任意後見があります。これは、将来の痴呆の発祥に備え、意思能力のはっきりしているうちに後見契約を結んでおくというものです。つまり、「停止条件付契約」で、将来、自分が痴呆が発祥したら、後見人となってもらう契約をしておくものです。

・任意後見契約の方式は、
「公証人の作成する公正証書」によることが必要ですが、これが作成されると、公証人から東京法務局への嘱託により、「任意後見の登記」がされる仕組みになっています。


2.法定後見

「法定後見」は、痴呆が発祥し、本人が契約を結ぶ能力を欠くに至った場合、親族が「家庭裁判所に申請」して、後見人等を選任してもらうことになります。

・.法定後見では、痴呆の程度により、軽い順に
「補助」、「保佐」、「後見」の3形態をとっています。 補助は、このたび新しく設けられた制度で本人の状況に応じ、申立の範囲内で補助人に 同意権を与えています。


* * * 法定後見の種類 * * *
種    類 対象となる程度 適         用
補    助
・判断能力が不十分な場合
・補助の申立ての場合は、十分ではないがまだ本人に判断する能力があるので、補助を開始する時には
「本人の同意」も求められます。

保    佐
・判断能力が著しく不十分な場合
・お金を借りたり、保証人となったり、不動産を売買するなど法律で定められた一定の行為について、
「家庭裁判所が選任した保佐人の同意」を得ることが必要になります。

後    見
・判断能力が全くない場合
・審判が出て後見が開始されると、本人は
「選挙権を失い」、「印鑑登録も抹消」されます。また「資格」「地位」も失います。


・2013年(平成25年)5月27日、成年後見制度で後見人が付いた者も、選挙権を一律に認める公職選挙法改正案が、国会で成立した。

・失う資格・地位には、
「医師等」、「会社の役員」


登記事項証明書

・法定後見・保佐・補助が発効、もしくは任意後見契約が成立すると裁判所、公証人の嘱託により東京法務局後見登録課で後見登記がされる。その登記事項は、登記事項証明書により証明される。


登記なきことの証明書

・この証明書は、後見登記がされていないことを証明するものである。法務局・地方法務局戸籍課(東京は後見登録課)で発行される。

・従来の
「禁治産者・準禁治産者」でないことは、市町村役所で発行される身分証明書にて破産者でないことと一括で証明されていた。

・2000年4月以降の成年後見制度では、成年被後見人・被保佐人・被補助人でないことは登記されていないことの証明書にて証明されるようになった。

・対して、
「破産者でないことは身分証明書」で証明される。主として、国家資格の登録などにおいて欠格事由に該当しないことの証明に用いられる。



成年後見人と任意後見人の違い


      
成年後見人
    
任意後見人

後見人はいつ、誰が決める?

・親に判断能力がなくなってから、家庭裁判所が選任 ・親に判断能力があるとき、親が将来の後見人を選び公正証書で契約
後見人の仕事を限定できる?
・できない

・契約によりできる

後見人を直接監督するのは誰?

・家庭裁判所


・家庭裁判所が選任する
任意後見監督人




後見監督人がつく場合


      
法定後見制度
    
任意後見制度

後見監督人がつく場合

・家庭裁判所が必要と認めた場合のみつく ・必ずつく
後見監督人をつける手続き

・被後見人や後見人等が家庭裁判所に申し立てる
(候補者を推薦できない。)

・被後見人の家族が家庭裁判所に申し立てる
(候補者を推薦できる。)

選  任

・家庭裁判所が行う


・家庭裁判所が行う
(候補者が選任されるとは限らない)

正式名称
・成年後見監督人
・補佐監督人
・補助監督人


任意後見監督人

職  務

・成年後見人、保佐人、補助人の行為をそれぞれ監督する


・後見人の行為を監督する
(具体的な内容は任意後見契約ごとに異なる)

後見監督人になれない人

・後見人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹

・未成年者
・過去に後見人を辞めさせられたことのある人
・破産者
・過去に後見人を訴えたことがある人
・行方不明者

家庭裁判所への報告義務

・ある

後見人の解任
・家庭裁判所に請求できる


報   酬

・家庭裁判所が決定する


辞  任

・できる





 お勧めは任意後見です


・痴呆が発祥してから、自分の意に沿わない人を家庭裁判所から選任してもらうよりも、意思能力はっきりしているうちに、
信頼できる人、法人を将来の後見人に選任しておくことが、もっとものぞましいのは言うまでもありません。

・統計によれば、後見申請の理由として、第1番が
「財産管理」、第2番が 「身上監護」、第3番が「遺産分割」となっております。

・後見人との契約料金については、当人の所有している財産の内容によって又、どこまで管理を依頼するのかによって違ってきますが、「任意後見契約」を結ぶ際に、平均7万4千円、月額報酬は2万5千円から4万円といったところが多いようです。


・任意後見契約は、相手が成人であれば誰とでも結ぶことができます。しかし、「破産した人」「本人に対して訴訟を起こしたことがある人」「金銭面にル−ズな人」は除きます。


・平成24年4月1日施行された
「老人福祉法の改正」により、各市町村は「後見支援センタ−」を設置することが決まったが、今後、この後見センタ−が任意後見に関する相談が行われることになると考えられる。




  後見の終了はどこまで


・通常、法律では後見契約は本人の死亡により終了すると言われています。しかし、現実には後見人は本人の葬儀を出したり、 遺言執行者として遺産分割をしたりと、本人の死亡後もそれなりに整理が終わるまで携わることとなるのが一般的です。逆にそこまでしないと誰が葬儀を出したり、死亡後の残務整理をするのですかという素朴な疑問が生じてきてしまいます。


死後事務委任契約


・上記のように本人の死後、「医療費の精算」、「お葬式を出したり」、「お墓を建てたり」、「遺産の処理をしたり」と死後の事務について、生前に本人と委任契約を結んでおくことを「死後事務委任契約」といいますが、公証人役場において
「公正証書」にしておくことをお勧めします。


・このような内容は、遺言書で残しても法律上は有効とは認められないので、.「死後事務委任契約」を利用することが望ましい、と言われています。




  「任意後見契約」と「任意代理契約」


・「任意後見契約」が、認知症などの判断能力の低下に対応するものに対し、
「任意代理契約」は、判断能力は正常だが、身体が不自由になった際等に「代理人」を選ぶものである。

・任意代理契約は、「財産管理等の委任契約」とも呼ばれるが、できれば同じ人に「後見人」と「代理人」を依頼した方がよいとされる。それは、後見人になる人には、将来
「監督人」が付くため、代理人を兼ねることにより、権利の乱用を防ぎ、金融機関での信用を得やすい。

・「任意後見契約書」は、公正証書でしか作成できないが、「任意代理契約」は私文書でもよい。



  「権利擁護制度」と「成年後見制度」


「権利擁護事業」は、1999年から各市町村の社会福祉協議会(以下、社協という)で始まった事業で社協の職員がホ−ムヘルプなど福祉サ−ビスの利用契約、日常生活に必要なお金の金融機関からの引き出し、家賃や買い物代金の支払いなど、お金にかかわる様々な場面で手助けをすることを目的としている。

実際の仕事は、主に次の3つに分かれています。

@福祉サ−ビスの利用援助

 
 ・訪問による見守り

  ・地域の有償ボランティアや介護保険など福祉サ−ビスについての情報提供

   ・福祉サ−ビスの利用手続きや、利用料支払いの援助


A日常的な金銭管理

 
 ・年金などの受領に必要な手続き援助

  ・税金や公共料金、医療費、家賃などの支払い代行

  ・日常生活に必要な預貯金の出し入れ、現金の受け渡し


B書類等の預かりサ−ビス

 
・通帳、印鑑、年金証書、土地権利証などの重要書類を貸し金庫で保管


* * * 出来ないこと * * *

 ・守備範囲はあくまで日常生活なので50万円を超えるような金銭を扱うことは出来ません.

  ・不動産の売却などの法律行為

 ・有料老人ホ−ムなど施設との契約などの代行

 ・悪質商法に対するク−リング オフの代行はできますが、同制度の適用期間を過ぎた契約
  の取り消しはできません

 
 

・権利擁護事業
は、本来他人の手助けがあれば契約を結ぶことが出来る程度の人を対象としている。つまり、「意思能力」、「判断能力」のある人を対象としているものです。

・各市町村の社協では、「専門員」が個々の利用者に対する支援計画を作成し、「生活支援員」が定期的(ほぼ2週間に1回)に利用者宅を訪問するシステムになっています。

・そして、権利擁護事業の利用中に状態が悪化して意思能力、判断能力が失われた場合には、成年後見制に切り替えることが望ましいと言われていますが、成年後見制度では後見人への報酬などの費用が必要となるので切り替えせずそのままになっているケ−スが多いようです。



  今後の動き


・平成18年4月に改訂された介護保険法では、市町村が設ける「地域包括支援センタ−」で権利擁護事業を担うことになり、後見制も含まれています。

・身寄りのない高齢者には市町村が後見の申立をできるようになっています。



  成年後見、欠格条項排除へ


・知的障害や認知症などで成年後見制度を利用した場合、公務員などの資格を失う欠格条項が存在するが、平成30年3月の国会で見直す予定である。

国家公務員法

・国家公務員法では、成年後見制度を利用した場合には、
「公務員」「保育士」になれない。他に約180の法律で欠格条項を設けており、下記の資格・免許が制限されている。


・公務員  ・自衛隊員  ・保育士  ・介護福祉士   ・医療法人役員  ・貸金業登録  ・建設業許可



・公職選挙法には、後見人が付くと選挙権を失うとの規定があったが、2013年の違憲判決により、法改正がなされ、現在は投票ができる。



  成年後見人による利益相反行為


・老人ホ−ムの入居者の後見人になった時、判断力のなくなった被後見人にホ−ム側が寄付を要求し、それに応じた場合

・本人所有の建物を他人に貸す

・親族の求めに応じて判断能力が不安定な補助類型の本人に遺言を強要する。

・本人死後のことだからといって予め遺言執行者に就任してしまいろ、多額の報酬を取り決める。

・子の債務の担保−として本人の不動産への抵当権を設定を認める。

・本人のためにどうしても必要な場合には、
「家庭裁判所に相談」「利益相反行為」とされないようにする。