農地法に関する物権と債権



  農地法に関する物権

1.所有権

・所有権とは、所有者が自由にその所有物の「使用」、「収益」、「処分」をする権利であり、物の全面的支配権である。(民法206条)

2.地上権

・地上権とは、他人の土地において工作物、又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を指す(民法265条)。ここで言う竹木のうち、桑、果樹、茶等の場合は、作物として栽培するためには肥培管理する必要がある。そうすると、その場合は「耕作の目的」となる。

3.永小作権

・永小作権は、他人の土地において耕作、又は牧畜をする権利である
(民法270条)。永小作権の存続期間は、契約で定めるときは20年以上で50年以下としなければならない。もし50年を超える期間を定めたときは50年に短縮される。

・永小作権については、
「土地所有者に極めて不利」なので、敢えて設定することは考えにくく、農地法3条許可が問題になることは、ほとんどないと考えられる。

・相続税法23条により評価する。


「耕作権」は物権ではなく賃借権

・債権である
「耕作権(小作権)」とは 小作契約により、一方(小作人)が他方(地主)に小作料を支払って、その所有する農地を耕作し、または採草放牧地で養蓄する権利ですが、 「農地に賃借権等の権利を設定」するためには、農地法第3条の定めるところにより、農業委員会の許可を受けなければならない。

財産評価基本通達 42 別表1の定めのほか、各国税局の「財産評価基準書」「耕作権」の部に耕作権割合の指標が示されている。

参照ペ−ジ


4.質 権

・質権は、債務者が債権の担保として債務者、又は第3者から受取った物を占有つまり留置し、債務の履行を間接的に強制し、もし仮に債務が弁済されないときは、その物から優先的に弁済を受けることができる担保物件である
(民法324条、347条)

・質権は、何に質権を設定するかによって
「動産質」、「不動産質」、「権利質」に分かれる。

・農地等を目的とする質権は、対象が不動産なので
「不動産質」となる。

・不動産質の場合は、質権者は目的物を用法に従い
「使用収益できる権利」が認められている。一方、「不動産の管理費用」は不動産質権者の負担となる。


※銀行等の金融機関は、農地を質に取ろうと考えても農地法3条の許可が下りないので、農地等に不動産質が設定されることはあまりないと考えられる。

・従って、質権設定が問題となるのは、
「農業者個人」「農業生産法人」が、他の農業者などに融資した場合に限定されてくるものと考えられる。



  農地法に関する権利


「農地法3条1項」に掲げる権利とは、「所有権」、「地上権」、「永小作権」、「質権」という物権と「使用貸借による権利」、「賃借権」、及び「その他の使用収益権」を指す。 


※現実的に、頻繁に移転または設定行為が行われる権利は、「所有権」、「使用貸借による権利」、及び「賃借権」の3つに限定されてくる。



  ヤミ小作とは

・農地の貸し借りには、農地法第3条の許可が必要ですが、この許可を受けていないものを
「闇小作」といい、一般的には無許可賃貸借のことです。

・ 農地法は、小作の中でも特に賃貸借を強力に保護していますが、「闇小作」は保護されません。

・ 相続評価において、実際に耕作権が設定されているつもりでも、
「農業委員会の農業台帳に記載」がなければ、原則的にはヤミ小作となってしまいます(事由を話しても、認めてくれないことや後々のトラブルにもなりかねます)。今のうちにきちんと確認しておくことが大切である。