貸家建付地とは
貸家建付地となる場合
・父Aの土地にAの資金で賃貸アパ−トを建てた後、相続人Bにアパ−トを贈与した。その後父が死亡した場合、当該土地の評価は貸家建付地となる。
解 説
・当初は、アパ−トを通しての土地の賃貸があり、その後使用貸借となった。アパ−トの賃借人が、当初建物の賃貸借契約をした相手は親のAであり、その時のその敷地はアパ−トの所有者Aの土地でしたから、その建物を通してその土地の使用権も賃借人は当然持っている。
・貸家建物の「贈与」があった直前において、その建物の敷地である土地は貸家建付地であったことから、その後使用貸借になっても「貸家建付地評価」となる。
・同じく、「相続」で取得した土地が「貸家建付地」の場合には、その後も「貸家建付地」となる。
・相続人Bへアパ−トを贈与してから、「Aの相続開始までの間に」アパ−トの入居者が全員入れ替わった場合には、「土地の使用権」を主張できる賃借人は存在しなくなったので、当該アパ−トの敷地は「自用地」として評価することになる。
・賃借人が50%入れ替わった場合には、「土地の使用権」を主張できる賃借人も50%として計算割合に算入する。つまり、「賃貸割合」を求めた上で評価することになる。
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貸家建付地とならない場合
・Aの土地を相続人Bが使用貸借で借り、その土地にBがアパ−トを建てた場合
解 説
・そもそも、当初から使用貸借の土地なので、そこにアパ−トを建てても、使用貸借が賃貸借に変わることはない。
従って「自用地評価」となる。
・「民法の理論」では、「先の権利 (先順位)」を「後の権利 (後順位)」が妨害することはできない。
・「事例1」の場合は、当初は「貸家建付地」であるので、その貸家を子供に贈与して、土地を「使用貸借」にしたところで、貸家建付地である。
・「事例2」の場合は、当初から「使用貸借」であるので、子供が貸家を建てたとしても、「貸家建付地」にはならない。
・「事例1」も「事例2」も、見た目は同じなので、親の相続を依頼された税理士としては、建物の登記簿謄本を入手して、その建築年日等から「貸家建付地」なのか「使用貸借」なのか判断する必要がある。
・「事例1」においては、賃借人が親の建てた時と変わり、建物が子供の所有物となってからの賃借人の場合には、新賃借人には土地に対する権利は無いので、「土地は自用地評価」となる。
・税理士は、「賃貸借契約書」も調べて、「貸家建付地」なのか「使用貸借」なのか、または「賃貸割合」を乗じるのかを判断する必要がある。
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図解による「貸家建付地」と「自用地」
@当初、A所有の土地にAが貸家を建て甲に貸した場合、甲は「借地・借家法」に定める「借家権」に基づき、土地にも使用・収益権を持っている。一方、土地所有者は、自己の使用・収益が阻害されるので「貸家建付地」として評価減してやらないといけない。
AAに相続が発生し、貸家を相続人Bが相続し相続人Cが土地を相続したとしても、賃借人甲は土地に対して同じく使用・収益権を持っていることに変わりはないので、土地は「貸家建付地」のままである。BはCから土地を使用貸借している。
B入居者が甲から乙に変わった場合には、乙はBに対し借家権を有し、BがCに対して持っている土地の使用権に対し使用収益権を持つことになるが、相続税法上、この使用権の評価はゼロなので評価減はない。従って、土地は貸家建付地ではなく、「自用地評価」になる。
・被相続人Aが「夫」、相続人Cが「妻」、相続人Bが「長男」とすれば、より分かり易い。
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相続 |
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入居者変更 |
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分譲マンションにおける土地部分の評価
・相続で取得した分譲マンションの土地部分の評価
解 説
・分譲マンションが自用であれば、当該土地の部分も自用地評価となるが、他人等に賃貸している場合には、建物部分は当然借家権割合だけ減額になるとともに、土地部分についても「貸家建付地の評価」となる。
アパ−トにおける空室割合と貸家建付地の評価
・被相続人は、3月15日に死亡した。
・遺産に学生専用のアパ−トがあり、室数は20室
・課税時期には、20室中10室が空室であった。
・3月上旬まで入居していた学生が卒業のため退去、新しく入居する学生を募集、3月末には全部の部屋が実際に賃貸された。例年の状況も同じである。
解 説
・貸家及び貸家建付地の価額は、それぞれ下記の算式により評価する。
貸家の評価
貸家の価額=自用の家屋の価額×(1−借家権割合×賃借割合)
貸家建付地の評価
貸家建付地の価額=自用地としての価額×(1−借家権割合×賃借割合)
賃借割合
* * * 財産評価基本通達26(注)2 * * *
・賃貸割合は、原則として課税時期において実際に賃貸されている部分の床面積に基づいて算定するが、継続的に賃貸されていた独立部分で、「一時的に空室となっているもの」については、賃貸されている床面積に含めて算定してもよい、としている。
・しかし、アパ−トを譲渡するため、又は貸付を止める目的などで、その入居者を立ち退かせて空室となっている場合には、その空室となっている部分は、「事業が継続されていない」ので、貸付割合、賃借割合の計算が必要になる。
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・事例の場合は、アパ−トの半分の部屋が空室であったが、3月上旬まで入居していた学生が卒業のために退去したものであり、新入生の募集により3月末には全部の部屋が賃貸されていることから、「一時的に賃貸されていなかった」、と認められる。
・貸家についても同様に、「全体が貸家」として評価してよい。
・実際に入居募集をかけている場合には、例え「半年や1年間」空家になっていたとしても、貸家及び土地全体を按分計算することなく、貸家および貸家建付け地として評価して差し支えない。
・逆に否認された事例としては、テナントビルのワンフロアが4年間に渡り空家になっており、税務調査の際には他に譲渡されていた。税務署は、賃貸する努力が足りなかったとして否認した。税務調査の際に賃貸されていれば、また状況は違っていたとも考えられる。
・空室の期間中に「他の用途」に供していないこと
・課税時期後に締結した賃貸借契約が「一時的なもの」でないこと
・空き室が多いと、土地全体に貸家建付地としての評価減が及ばないことになるので、同族法人を設立し当該法人にアパ−トを売却すれば、土地全体に借地権割合の評価減が適用可能になる。
・同族会社に一括で借り上げてもらう。(サブリ−スしてもらう。)
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アパ−トに隣接する駐車場
・アパ−トの敷地は貸家建付地で評価したが、アパ−トと隣接する駐車場も貸家建付地として評価してよいのか。
解 説
・隣接する駐車場の使用者全員がアパ−トの住人であれば、その敷地は貸家建付地として評価できる。
・駐車場がアパ−トの敷地と一体になっており、使用者がアパ−トの賃借人のみである場合は、「敷地を利用する権利が駐車場を含めた敷地全体に及ぶ」ため、アパ−トと駐車場の全体を貸家建付地として評価できる。
・アパ−トの敷地と一体になっているが、駐車場の「使用者がアパ−トの賃借人以外」の借主もいる場合は、通常の「貸駐車場と同様」なので、駐車場部分は「自用地」として「雑種地」評価する。
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・下図のように、ビルの賃借人とそれ以外の者の駐車場が、「フェンスなどで明確に区分」されている場合には、ビルの賃借人用の駐車場は、貸家建付地評価になる。
戸建における空室と貸付地の評価
・戸建ての貸家が4棟ある。相続開始前に1棟が空き家になったが、募集していたため相続税申告前に入居した。
・もとより貸家であったので家屋は貸家、敷地は貸家建付地と評価して申告した。
・税務調査において、自用家屋、及び自用地評価になると指摘された。
解 説
・戸建てにおいて、相続開始日現在貸家が空室となっている場合には、もっぱら賃貸用として建築されたものであっても、評価時点ではその家屋に対して「使用権等の制約がない」ため、「貸家」や「貸家建付地」としての減額は出来ない。
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賃貸不動産を同族会社にサブリ−スした後に子供に贈与した場合
・親が賃貸不動産を同族会社にサブリ−スした後に子供に贈与した場合については、当該賃貸不動産を同族会社にサブリ−スした時点で土地は「貸家建付地」であり、当該土地を子供に贈与した後、親に相続が発生してもサブリ−ス先は同じ同族会社なので、やはり土地の評価は「貸家建付地」のままである。
アパ−トが数棟ある場合の貸家建付地
・アパ−トが数棟建っている場合には、「1棟ごとの敷地を評価単位」として、貸家建付地か否か判断する。
一団の土地に複数のアパ−トがある場合
・一団の土地に複数のアパ−トがあり、その間に共同のアパ−ト賃借人の駐車場がある場合
・共同駐車場は、各アパ−トの敷地と考えられるため、貸家建付地として評価することになるが、アパ−トAの敷地とアパ−トBの敷地は「区分して評価する」ことになる。
・駐車場をどちらの敷地に含めるかは、例えばアパ−トA、Bの建築面積の比で按分するなどの方法を用いる。
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アパ−トを建築中の敷地の評価
・将来は、貸家の用に供されることが建築構造上確実と見込まれる場合であっても、課税時期においては、「貸家の敷地の用に供されている」ものではないので、自用地として評価する。
・ただし、貸家の用に供していた家屋を建て替える場合で、「旧家屋の借家人が引き続き新家屋に入居する契約」となっており、立退料の支払いがなく、また、家屋の建替期間中は、貸主の責任において、一時的な仮住居を保証しているようなときは、引き続き貸家の敷地の用に供されているものとして、貸家建付地として評価して差し支えない。
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