1.定期借地権には3つの種類がある
・定期借地権は、平成4年8月に新設された「新借地借家法」によって制定されています。
・定期借地権には大きく3つの種類があります。「一般定期借地権」(第22条)、[建物譲渡特約付借地権」(23条)、「事業用借地権(24条)、の3つです。このうち、私たちが住宅用として利用するときに適用されるのは「一般定期借地権」がほとんどです。
定期借地権の種類 |
利用目的 |
存続の
期間 |
特 徴 |
期間満了時 |
手続き・借地期間 |
一般定期借地権
(借地借家法22条)
(長期型定期借地権) |
建物の
所有 |
50年
以上 |
・期間満了による更新がない
・建物の再築による存続期間の延長がない
・建物買取請求権の行使ができない |
借地人は建物を撤去して更地にして返還 |
・契約は公正証書、書面で行う。
・「契約の更新をしない」、
「保存期間の延長をしない」、
「建物の買取請求をしない」という3つの約定を定める。
・借地期間終了に伴い、借地人は建物を取り壊して土地を返還する |
建物譲渡特約付借地権
(借地借家法23条)
(建物買取型定期借地権) |
建物の
所有 |
30年
以上 |
・30年以上経過した時点で、借地上の建物を地主に譲渡
・その後も貸借の形態で継続の請求ができる |
地主が建物を
買い取り |
・30年以上経過した時点で土地所有者が建物を相当の対価で買い取る旨を定める(建物を譲渡することで借地は消滅)
・借地権の消滅後、借地人または貸借人が建物の使用の継続を請求すれば、期間の定めのない賃貸借がされたものとみなす。 |
事業用借地権
(借地借家法24条)
(短期型定期借地権) |
事業用の建物の所有のために限る
(住居用には利用できない) |
10年
以上
20年
以下 |
・期間満了による法定更新がない
・建物買取請求権の行使ができない |
借地人は建物を撤去して更地にして返還 |
・契約は公正証書により行う。
・借地期間終了に伴い、借地人は建物を取り壊して土地を返還する。 |
定期借地権でない借地権(従来からあった借地権)
普通型借地権 |
限定なし |
30年
以上 |
|
法定更新あり
(更新後の期間は10年)更新回避には正当事由を要する。 |
・借地人に建物買取請求権あり。
・買取請求権が行使されると、借家関係は承継。
・借地人は別に約束がなければ退去。 |
2.定期借地権の設定に伴い、権利金の授受が行われた場合の課税関係−地主側
(1)個人の場合
- 収入額について
借地権の設定に際して借地人から土地所有者に対して支払われる権利金、協力金、礼金等であって、その名称を問わず、借地契約終了時に返還を要しない金銭、経済的価値を有する財産の供与(経済的利益)に対する取扱いは、土地の時価との関係で以下のとおり異なっています。
[イ]土地の時価の50%以下のとき・・・不動産所得として課税
[ロ]土地の時価の50%超のとき・・・・・譲渡所得として課税 されます
尚、不動産所得として課税される場合は、所得税法90条(変動所得及び臨時所得の平均課税)が適用されます。
- <費用について>
次の額が認められます
設定に伴い、受取った権利金
当該土地の帳簿価額 ×
----------------------------
受取った権利金 + 底地の時価
の額が譲渡収入に対する原価として損金処理できます。
- 参考条文・・・個人の場合
- 所得税法第2条
所得税法施行令第8条(臨時所得の範囲)
所得税法第90条(平均課税)
(2)法人の場合
- 収入額について
定期借地権設定時の権利金の金額が設定時の収入になる。
- 費用について
個人の場合と同じ額が原価として損金で処理されます。
3.定期借地権の設定に伴い、借地人から保証金等の名目で金銭を無利息で預かった場合の地主の課税関係−地主側
- (1)個人の場合についてのみ
- 定期借地権の設定に伴い,地主が借地人から保証金等の名目で金銭を無利息で預かった場合、地主が経済的利益を受けることとなり、この経済的利益については、原則として、次に掲げる区分に応じてそれぞれ次に掲げるとおり取り扱われます。
@
- 保証金等が各種所得の基因となる業務(不動産所得、事業所得、山林所得及び雑所得を生ずべき業務)に係る資金として運用されている場合又は業務の用に供する資産の取得資金に充てられている場合
- 当該保証金等による経済的利益の額を、当該保証金に返還するまでの各年分の不動産所得の金額の計算上収入金額に算入するとともに、同額を当該各種所得の金額の計算上必要経費に算入します。
A
- 保証金等が、預貯金、公社債、指定金銭信託、貸付信託等の金融資産に運用されている場合
- 当該保証金等による経済的利益に係る所得の金額については、その計算を要しません。
B
- 1.及び2.以外の場合
- 当該保証金等による経済的利益の額を、当該保証金等を返還するまでの各年分の不動産所得の金額の計算上収入金額に算入します。
- 尚、経済的利益の額は預託を受けた保証金等の額に適正な利率を乗じて計算した金額となります。
注:2.の金融資産の範囲は、運用益の発生が確実で、かつ、その運用益について必ず課税の対象となるといった性質を有する資産と考えられ、次に掲げる金融類似商品(法174三−八参照)は、この場合の金融資産の範囲に含むものとして取扱われます。
- 定期積金及び相互掛金
- 抵当証券
- 貴金属等の売戻し条件付売買口座
- 外貨投資口座
- 一時払養老保険(保険期間が5年以下のものに限る)
(国税庁の確認に基づく建設省からの事務連絡より)
4.定期借地権の償却−借主側定期借地権の設定に伴い、権利金を支出した場合の償却
- 個人の場合 ・・・ 償却できない
- 法人の場合 ・・・ 償却できない
- 考え方と問題点
建物の賃貸借については一時金としての権利金の償却が認められていますが、土地については認められていません。すなわち、税法上、土地や、土地の上に存する権利は、減価償却資産とは別個の資産とされており、償却の対象となっていません。
参考条文
法人税法 22条3項
法人税法 基本通達8-1-5
5.建物の償却に伴う耐用年数−借主側
定期借地権が設定されている建物の耐用年数 ― 地上権型、貸借権型共同じ
- 定期借地権の賃貸借の契約期間に関係なく、「減価償却資産の耐用年数表」のそれぞれの耐用年数により償却する。
6.相続税に於ける定期借地権の評価
(1)地主について
- 定期借地権等の目的となっている宅地の評価
自用地価額から、上記定期借地権の価額又は次の割合による価額のうち有利な方を控除して評価する。
〈イ〉残存期間 5年以下 100分の5
〈ロ〉 〃 5年超 10年以下 100分の10
〈ハ〉
〃 10年超 15年以下 100分の15
〈ニ〉 〃 15年超 100分の20
- 預り保証金の評価
保証金返還債務として債務控除する
保証金等の額に相当する金額 |
× |
課税時期における残存期間年数に応ずる
基準年利率の複利現価率 |
|
+ |
|
保証金等の額に相当する金額 |
× |
保証金に対する約定利率 |
× |
課税期間における残存期間年数に応ずる基準年利率の複利年金現価率 |
(2)借主について
- 定期借地権(上地権)の評価
原則として課税期間において借地権者に帰属する経済的利益及びその存続期間を
基として評価した価額によって評価する。
<イ>原則
定期借地権等の設定の時における
借地権に帰属する経済的利益の総額 |
× |
課税期間におけるその定期借地権等残存期間年数
に応ずる基準年利率の複利年金現価率・・・a |
-------------------------- |
---------------------------------- |
定期借地権等の設定の時における
その宅地の通常の取引価額(時価) |
定期借地権等の設定期間年数に応ずる
基準年利率の複利年金現価率・・・b |
<ロ>簡便法
定期借地権目的となっている宅地の
課税時期における自用地価額 |
× |
定期借地権等の設定時に
借地人に帰属する経済的利益の総額 |
× |
a |
----------------------------- |
--- |
定期借地権等の設定時における
その宅地の通常取引価額(時価) |
b |
- 差入保証金の評価
保証金返還請求権(資産)として評価
評価額は(1)の地主についての預り保証金と同じ
(注)基準年利率についてはH16.1.1以降は3カ月ごとに期間区分(短期・中期・長期)の別に公表されています。
7.契約期間終了時の課税関係
(1)地主について
- 権利金について当初の契約時に課税されているので、権利金の課税関係なし
- 保証金について返金あるのみ
(2)借主(建物所有者)について
- 地上権型(権利金方式)について
権利金は地代相当故返還はないでしょう
注:事業用の権利金の取り扱い
期間中 …
償却不可
終了時 … 損金算入
- 賃借権型(保証金方式)について
保証金 … 返還あり(課税関係なし)
権利金 …
権利金は地代相当故返還はないでしょう
注:事業用の権利金の取り扱い
期間中 … 償却不可
終了時 …
損金算入
|