相続税の計算


  法定相続分


 1.被相続人に配偶者がいる場合の法定相続分

 
* * * 配偶者がいる場合の法定相続分(昭和56年1月1日以降) 民法900条 * * *
配偶者 直系尊属 兄弟姉妹
1/2 1/2    
2/3   1/3  
3/4     1/4
※被相続人の甥、姪についてのみ代襲相続権をみとめる。民法887条3項

※非嫡出子は嫡出子の1/2としていたものが平成25年から修正、
「半血兄弟」は全血兄弟の1/2とした。

昭和37年4月27日最高裁判決

・懐胎出産という事実によって母子関係を明らかにできるのであるから、認知は不要とすべきであるという考えが強まり、ついに最高裁も母子関係については原則として認知は必要ないとしました。

* * * 半血兄弟」とは * * *

・兄弟姉妹が推定相続人になる場合には、必ず子はいないことになります。  そして、被相続人から見て兄弟姉妹のうちに片親が異なる兄弟姉妹がいる場合、その片親の異なる兄弟姉妹は、被相続人と同一の両親から生まれた兄弟姉妹(全血)に比べて法定相続分は2分の1になります(民法900条4号但書前段)。



* * * 配偶者がいる場合の旧法定相続分(家督相続廃止〜昭和55年12月31日まで) * * *
配偶者 直系尊属 兄弟姉妹
1/3 2/3    
1/2   1/2  
2/3     1/3


 2.被相続人の子供の法定相続分

配偶者がいて子供が1人の場合
・配偶者が2分の1、子供が2分の1
    
配偶者がいて子供が3人の場合 
・配偶者が2分の1、子供が6分の1

配偶者がいて嫡出子と認定されている非嫡出子が各々1人いる場合 
・配偶者が2分の1、嫡出子が4分の1、非嫡出子が4分の1

・平成25年9月4日最高裁判所により、嫡出子と非嫡出子は、同等になった。

配偶者がいない場合 
・子供が100%



 3.被相続人の親の法定相続分

被相続人に配偶者・子供のどちらもいない場合
・親の法定相続分 100%
    
被相続人に子供がいなく配偶者がいる場合 
・配偶者が3分の2、親は3分の1

被相続人に子供しかいない場合 
・子供が100%で親の法定相続分はゼロ



4.被相続人の兄弟の法定相続分

被相続人に、配偶者・子供・父母のすべてがいない場合
・兄弟の法定相続分 100%
    
被相続人に子供・父母のどちらもいなくて配偶者がいる場合 
・配偶者が4分の3、兄弟が4分の1

被相続人に父母、又は子供がいる場合 
・兄弟の法定相続分ゼロ




  法定相続人の数の取り扱い(相続税を計算する場合)


(1)
「相続の放棄」があった場合には、その放棄がなかったものとされ、基礎控除の数に入ってきます。(相続税法15条の2)

・相続の放棄があった場合には、
「代襲相続」は生じない。

(2)相続人としての
「欠格」「廃除」があった場合には、代襲相続人がいる場合には基礎控除の数に入ってくるが、代襲相続人がいない場合には、本人分は基礎控除には入りません。

・「欠格」、「排除」の場合には、相続放棄と異なり、
「代襲相続」が認められる。

(3)養子も法定相続人になりますが、次々に養子を迎えて基礎控除額を上げるような乱用を防ぐために、養子の数は、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までと制限
(相続税法15条2項)されています。

(4)しかし、
「特別養子」、「被相続人の配偶者の実子で当該被相続人の養子となった者」、「代襲相続」は、実子とみなされます。(相続税法15条3項)



  相続税の速算表


課税価格 税   率 控 除 額
1,000万円以下 10%  −
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円


  遺産に係る基礎控除


・遺産に係る基礎控除額は、次の算式による

        
3,000万円  +  600万円  ×  法定相続人の数


  相続税額の2割加算

 
・親、子、配偶者以外の人が相続等により財産を取得した場合には、相続税額にその
「2割を加算」します。

・したがって、
「兄弟姉妹」や「孫」(養子となった孫も含む)は、相続税額が2割増えます。
    
・ただし、
「代襲相続人となった孫」は、加算の対象とはなりません。


  配偶者の税額軽減


・配偶者が相続した財産が、配偶者の
「法定相続分相当額以下の場合」には、相続税はかかりません。

・また、法定相続分を超えても、
「1億6千万円まで」は、相続税はかかりません。


・ただし、相続税申告期限までに遺産分割協議が整っており、配偶者の相続分が確定していることが条件になります。


・相続税の申告において、
「配偶者の当初申告要件」という制度が存在し、税務調査により新たな相続財産が発見され、当該相続財産を配偶者が相続することになっても、配偶者の軽減税率は認めない、というものであった。

配偶者の当初申告要件の廃止

・しかし、
「平成23年税制改正」により、「配偶者の当初申告要件」が撤廃されることとなった。また、「更正の請求」によっても配偶者の軽減税率が適用できることとなった。




  未成年者控除


・相続人の年齢が20歳未満のときは、成人に達するまで、
1年につき10万円が相続税額から控除されます。

 (例:10歳の場合は(20−10)×10=100万円)が、税額から控除されます。

2022年からの対応

・民法が改正されたことに伴い、2022年4月1日から
「未成年者の定義」が、20歳未満から18歳未満に変更になる。






  胎児に対する取扱い


・胎児については、民法上では、相続、遺贈に関して既に生まれたものとみなされ、権利義務の主体となり得るものとされていますが、相続税を計算する上では、生きて生まれて来るまでの間は、法定相続人として数えることはできません。


民法907、908条

・このような場合、
「家庭裁判所」を通して「遺産分割の禁止」をしてもらい、胎児が生き生まれた後に、改めてこの子を法定相続人に含めて計算をしなおすことになります。

・「遺産分割の禁止」は、相続人や遺産の範囲が確定しない場合や、相続財産の種類又は性質上直ちに分割するのは控えた方が共同相続人の利益になると考えられる場合に利用される。

@相続人として
「胎児がいる場合」

A共同相続人中に
「行方不明」ないし「生死不明」の者がいる場合

B
「遺産の範囲」について争いがある場合、

C遺産の状態が
「債務を整理した後」でないと分割に値しない場合等


・遺産分割の禁止がなされると遺産分割が一時延期されることになると考えられています。そして、分割禁止期間経過後に改めて遺産分割手続きを行うことになります。




  障害者控除


・相続人が障害者に該当するときは、85歳に達するまで、
「1年につき10万円」(特別障害者は20万円)が相続税額から控除されます。
 


  贈与税額控除


・「相続開始前3年以内」の贈与財産の価額(贈与時の価額)は、相続財産の価額に加算し、その贈与により支払った贈与税額は相続税額から控除されます。



  相次相続控除


・相続があってさらに「10年以内に相続が発生」したら、最初に支払った相続税の一部を2回目の相続の相続税額から控除できる制度があります。


特例の適用と相続税の申告義務


 「配偶者の税額軽減」「小規模宅地等の評価減」などの特例を適用した場合には、相続税額がゼロとなっても必ず相続税の「申告書の提出」が必要となります。



  法定相続分の歴史


* * * 配偶者がいる場合の法定相続分(日本国憲法施行の日〜昭和22年12月31日)  * * *
配偶者 直系尊属 兄弟姉妹
1/3 2/3    
1/2   1/2  
2/3     1/3
※兄弟姉妹の直系卑属には、代襲相続権はない。


* * * 配偶者がいる場合の法定相続分(昭和23年1月1日〜昭和55年12月31日)  * * *
配偶者 直系尊属 兄弟姉妹
1/2 1/2    
2/3   1/3  
3/4     1/4
※兄弟姉妹の直系卑属に、代襲相続権を認めたが、後に子だけに限定した。

※非嫡出子は嫡出子の1/2とし、半血兄弟は全血兄弟の1/2とした。