・延納が困難になった場合、申告期限から10年以内に限り、物納への変更が認められるようになりました。 これは今回の改正の中でも、納税者にとって大変に重要な改正の一つといえます。
・従来は「例外から原則への変更」として、物納から延納への変更は認められていたが、「原則から例外への変更」ということで、延納から物納への変更は認められていませんでした。
・そのため、相続税申告時に納税方法の選択を誤ると、後に納税困難に陥るというケースが見受けられ、特に平成4〜5年頃に多発しました。この時は納税者を救済するため、期間限定で1度に限り延納から物納への変更を認める特例物納が実施されましたが、今回は制度として「延納から物納への変更」が認められるようになりました。
・最初に納税方法の選択を誤っても、後でやり直しができるという意味で、納税者にとってはプラス面の多い改正です。
ただし、留意すべき点がいくつかあります。特に重要なのは次の2点です。
@資力の状況の変化等により延納が困難になった場合に認められるものであり、納税
者の勝手な理由で変更できるものではないこと。
A収納価額が物納申請時の価額であること。
Aについては、物納財産の収納価額は原則は課税価格計算の基礎となった評価額です。これは近年のように地価下落が長く続いた時期には納税者にとっては大きなメリットでした。なにしろ物納申請財産の価額が収納までの間にどんなに下がっても、その下落リスクは国が取ってくれるわけですから。
・ところが延納から物納に変更した場合は、物納申請財産の収納価額は物納申請時(つまり物納に変更した時)の価額になります。つまり値下がりしたら、下がった分は収納価額から引かれてしまうことになります。
・下落はだいぶ収まってきたとはいえ、都心の一部を除いて地価はまだまだ弱含みです。「いつでも物納に変更できるから」とたかを括っていると、物納では税額に足りないということになります。
物納にも利子税がかかるようになった
延納よりも高い利子税率ということも要注意です
・物納により納付が完了するまでの期間に利子税がかかるようになりました。
・土地を物納する場合に必要な境界確認書や工作物の確認書等を揃えるには隣接地主等の第三者の協力が不可欠です。 また、貸宅地の場合は、土地賃貸借契約書の整備や地代の値上げには借地権者の協力が不可欠です。
・物納申請時にこれらの書類が全て揃っていれば問題ありませんが、物納申請後に揃えようとすると、その期間は利子税が課されるようになりました。隣接地主や借地権者が協力的なら良いですが、そうでなかったら大変です。物納申請後、最大1年が経過しても、それらの書類を揃えられなかったら、物納申請が却下されるのは前記のとおりですが、仮にやっとの思いで揃えられたとしても、あまり時間がかかってしまうと、利子税の負担が大きくなります。
・利子税の割合は「年7.3%」と「前年の11月30日の公定歩合+4.0%」のいずれか低い割合(平成19年中の割合は4.4%)となっています。延納の場合の利子税割合は特例割合の適用により低めに抑えられていますが、物納の場合は特例割合の適用がありませんので、要注意です。
「審査期間は利子税が免除されます」が、利子税は物納できませんので、充分な注意が必要です。