小規模宅地等の特例



  特例の概要

租税特別措置法第69条の4

・遺産の中に「住宅」「事業」に使われていた宅地等がある場合には、その宅地等の評価額の一定割合を減額する特例があります。

・これを
「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」といい、 この特例を受けられる人は、相続遺贈によって宅地等を取得した個人です。

    
  特例の対象となる宅地等

特例の対象となる宅地等

・この特例の適用を受けられる宅地等は、個人が「相続」「遺贈」により取得した宅地等で、次の(1)〜(5)のすべての要件に該当するものです。

  ただし、郵政民営化法の施行日
(平成19年10月1日)前から被相続人又は被相続人の相続人と旧日本郵政公社との間の賃貸借契約に基づき日本郵政公社に貸し付けられていた郵便局舎の敷地に使用されている一定の宅地等で一定の要件に該当するものは、特定事業用宅地等としてこの特例の適用を受けることができます。

(1)  相続開始直前において、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族(以下「被相続人等」といいます。)の「事業の用」若しくは「居住の用」に供されていた宅地等であること。

* * * 「事業」の解説 * * *

・この場合、「事業」には、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為(準事業といいます。)が含まれます。

 
(2) 
「建物又は構築物の敷地」の用に供されていたものであること。

(3)  棚卸資産及びこれに準ずる資産に該当しないものであること。

(4)  各人が取得した宅地等のうち、この特例の適用を受けるために選択した宅地等(注)が限度面積までの部分であること。

被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲

・措置法69条の4第1項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等として、被相続人だけでなく、
「その親族の所有する家屋の敷地の用に供されていたもの」も該当する旨定められている。

    この場合の限度面積とは、その選択した宅地等の利用状況等により次のようになります。
宅地の種類 限 度 面 積 減 額 割 合

@特定事業用宅地・特定同族会社事業用宅地等


・被相続人の事業
(不動産の貸付を除く)を引き続き営む場合などの宅地

・事業用宅地としての特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限まで「事業の継続」、「保有継続」が要件になっている。

・「特定同族会社」に土地を貸しており、相続人が同族会社の役員になっているような場合

・ただし、上記特定同族会社が
「不動産等の賃貸業」の場合には、当該対象にはならない。

・被相続人の宅地に被相続人の建物が建ってお り、当該「土地・建物」を特定同族会社が借りている場合にも適用される。


・国営事業用宅地・・・・特定郵便局の用に供されている宅地で、引き続き国の事業の用に供される見込であるもの。

・小規模宅地特例適用の条件としては、
「使用貸借」ではなく「賃貸借」にしておくこと。

「同族会社の役員」については、相続発生後に申告期限までに就任していれば差し支えない。

「特定同族会社」とは、相続開始の直前において、被相続人、及び被相続人の同族関係者が株式の50%超を保有する法人をいう。

400u以下 80%

A特定居住用宅地等

   被相続人と同居の親族が引き続き居住する場合などの宅地
330u以下 80%

B貸付事業用宅地等


 @A以外の宅地、駐車場・アパ−トなどの「貸付用宅地」及び「貸家建付地」


「駐車場」の場合には、舗装・砂利敷してあることが条件

「使用貸借」では、小規模宅地特例の適用は受けられないので、必ず「時価の1%〜1.5%相当額の賃貸借契約」にしておく必要がある。

・相続税の申告期限までは、
「事業継続」・「保有継続」が要件になっている。

200u以下 50%
* * 平成25年改正後* * *


・小規模宅地の減額規定は、土地だけでなく「借地権」についても適用がある。
(法人税措置法69条の4の1項で「土地又は土地の上に存する権利をいう」としている。)


イ  選択した宅地等が、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等(以下「特定事業用等宅地等」といいます。)である場合
・・・・・・・・・・・・・・
・400平方メートル

ロ  選択した宅地等が、特定居住用宅地等である場合
・・・・・・・・・・・・・・・
330平方メートル

ハ  選択した宅地等が、特定事業用等宅地等及び特定居住用宅地等以外の特例の対象となる宅地等(以下「貸付事業用宅地等」といいます。)である場合
・・・・・・・・・・・・・・・
200平方メートル


(5)  特例の適用を受けようとする宅地等が相続税の申告期限までに分割されていること。ただし、その宅地等が申告期限までに分割されていない場合であっても、次のいずれかに該当することになったときは、この特例の適用を受けられます。

イ  相続税の申告期限から3年以内に分割された場合


ロ  相続税の申告期限から3年を経過する日において分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割されたとき

(注) 上記の場合には、「遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内」に税務署長に対し、「更正の請求書」を提出することができます。



  平成22年の税制改正 措置法69の4

平成22年の税制改正

・従来は、課税の特例が受けられる「小規模宅地等を複数の者が共同で相続」等により取得した場合、その取得者のうち一人でも適用要件を満たす者がいる場合には、その小規模宅地等の全体が80%軽減の対象とされてきた。

・改正により、取得者ごとに適用要件を判定し、要件を満たした被相続人の親族の取得した持分の割合に応じた部分が軽減の対象となった。
(措置令40の2D)


事     例 1
**相続前の居住用資産の状態**
家   屋 被相続人の居住用
敷   地 被相続人が保有

**相続後の状態**
家   屋 用途を問わない
敷   地 配偶者が取得 非同居親族甲が取得 
                     
改正前 80%軽減適用可
                     
改正後 80%軽減適用可 80%軽減適用不可 

 事     例 2
**相続前の居住用資産の状態**
家   屋 被相続人の居住用(同居親族乙あり)
敷   地 被相続人が保有

**相続後の状態**
家   屋 同居親族乙が居住 
敷   地 同居継続親族乙が取得 非同居親族甲が取得 
                     
改正前 80%軽減適用可
                     
改正後 80%軽減適用可 80%軽減適用不可 

 事     例 3

**相続前の居住用資産の状態**
家   屋 被相続人の居住用(同居親族なし)
敷   地 被相続人が保有

**相続後の状態**
家   屋 用途を問わない 
敷   地 自宅のない親族丙が取得 非同居親族甲が取得 
                     
改正前 80%軽減適用可
                     
改正後 80%軽減適用可 80%軽減適用不可 

 事     例 4

・宅地の上に存する一棟の建物の上に、居住用と貸付用がある場合の見直し

・従来は、居住用部分が含まれている場合には、特定事業用宅地等に該当する部分以外の全ての部分が特定居住用宅地等と同様の上限面積・軽減割合とされてきた。

**一棟のマンション**
家   屋 居住用部分
貸付用部分
空   き   室
敷   地 居住用部分対応 貸付用部分対応 空き室部分対応
                     
改正前 80%軽減適用可
                     
改正後 特定居住用
330u 
80%軽減可
不動産貸付
継続200u
50%軽減可
軽減特例なし


  非継続における適用対象からの除外


・平成22年の改正においては、さらに相続人等が、「相続税の申告期限までに」事業、又は居住を継続しない宅地等について、軽減の適用対象から除外することとした。改正前は、すべての場合において200uまで50%減額を認めていた。

例外

※配偶者については、居住継続要件はなく80%軽減の対象となる。

※被相続人に配偶者や同居親族がおらず、自宅を持たない子供などは、別居でも80%軽減の対象となる。



  老人ホ−ムへの入所と小規模宅地等の特例

事     例 5

・被相続人は、居住していた建物を離れて老人ホ−ムに入所したが、一度も退所することなく死亡した。この場合、被相続人が入所前まで居住していた建物は、相続開始直前まで空家となっていたが、その建物の敷地は、相続開始開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するか。

解              説


・次に掲げる状況が客観的に認められるときには、被相続人が居住していた建物の敷地は、被相続人の居住の用に供されていた宅地に該当するものとして差し支えない。


1.被相続人の身体、又は精神上の理由により、介護を受ける必要があるため、老人ホ−ム
  へ入所することとなったものと認められること

2.被相続人が、いつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていたこと

3.入所後、新たにその建物を他の者の居住用の用、その他の用に供していた事実がないこ
  と

4.その老人ホ−ムは、被相続人が入所するために被相続人、又はその親族によって所有権
  が取得され、あるいは終身利用権が取得されたものでないこと


※1について、
「特別養護老人ホ−ムの入所者」については、その施設の性格を踏まえ介護を受ける必要がある者にあたるものとして差し支えない。「その他の老人ホ−ム」については、入所時の状況に基づき判断していたが、平成27年の改正により、死亡時に要介護・要支援であれば良いとされた。参照ペ−ジ

※2の「被相続人が、いつでも生活できるよう建物の維持管理が行われている」とは、その建物に被相続人の起居に通常必要な動産が保管されるとともに、その建物及び敷地が起居可能なように維持管理されていることをいう。



  特例を受けるための手続

  この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例を受けようとする旨など所定の事項を記載するとともに、計算明細書や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。 (措法69の4、70の3の3、70の3の4、措令40の2、措規23の2、措通69の4-8、郵政民営化法180)