寄与分・寄与者             


  寄与分・寄与者 民法904条の2  


・被相続人の「生前にその財産の維持や増加に特別な貢献をした」ということで、その貢献に応じた金額が相続分に加算され、他の相続人よりも多く遺産を受け取れる者がいる場合があります。

・この加算分を
「寄与分」、貢献した相続人を「寄与者」といいます。寄与分については「昭和56年1月1日」から施行された法律である。


具体的に「寄与」に当たる例としては

  @無給で家業に尽くしたとか、家業に出資したとか

  A親の療養の介護や看護をしたことによる金銭的負担

  B夫名義で購入した住宅のローンを働いていた妻が半額負担した、

  C親の財産の維持・管理・増加に特別に貢献した


・例えば、相続財産が価値5,000万円程度のマンションしかなく、相続人が配偶者と長男のような場合、長男に権利を主張されれば母親はマンションを売却し換金した半額の2,500万円を長男に渡さなければならない。

・しかしそれでは母親の居住場所が無くなってしまう。このような場合、母親の居住場所を守る目的で、
「夫への介護を寄与分」として2,500万円を認めてもらえば、残り2,500万円の半額1,250万円を代償金として長男に支払うことにより、マンションに住み続けることが可能になる。

・寄与分とは、財産を持たない人達への
「最後の救済」である。


・要するに、複数の相続人の中で、他の相続人と違って被相続人のために特別の貢献をして、その結果「被相続人の財産の維持または増加に特別な寄与をした」と認められれば、「その分を寄与分として相続分に加算できる」ということです。

・寄与分は
「親の介護」をした子に対しても認められます。

・その介護が無ければ、親は自分の預金などを取り崩して、高額な有料介護サービス(有料老人ホームや24時間の付き添い介護など)を利用せざるを得なかった場合などです。

・介護した子は、
「有料サービスの利用による財産の流出を防ぎ、親の財産の維持に寄与した」とみなされます。



  寄与者の相続分の計算


・寄与分を含めた相続分の計算の仕方は、ある相続人の寄与分が1,000万円に値するとみなされれば、
「最初に全相続財産から1,000万円を差し引き」、残りを法定相続分等で分割して他の相続人に与え、寄与者にはそれに1,000万円を加算した額を与えるようにします。

・寄与分の主張をする相続人は、誰が見てももっともだと分かるような裏付け資料を提出し、特別の寄与があることを自ら立証しなければならない。

・寄与分を認めるか認めないか、そして認めるならいくらになるのかの決定は、遺言書に指定が無ければ相続人同士の話し合い(遺産分割協議)によりますが、話がまとまらない場合は、
「寄与者が家庭裁判所に審判を申立てる」ことで決めてもらいます。

 寄与分の決め方

@共同相続人間の協議(民法904の2@)、若しくは

A寄与した者が、家庭裁判所に対して調停または審判申立て、それにより家庭裁判所が寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して寄与分を定める
(民法904の2A)


 寄与分が認められるための要件

@寄与分を主張する者が、寄与に対する相応の対価などを受けていないこと

A被相続人との身分関係において通常期待される程度を超える程度の寄与であること


・夫婦間には、
民法752条に定める協力扶助義務があり、兄弟姉妹や直系血族間には民法877条に定める扶養義務が存在する。

・上記のような法律上の義務を超えた特別の寄与を
「寄与分」としている。


・寄与分は共同相続人の実質的な公平を図るための制度です。


  法定相続人だけに認められる


・自腹を切って親の介護をした者や、ほとんど無給で家業の発展に尽くした者と、何もしなかった者が、遺産を均等に受け取るのは不公平なので、それを是正するのが目的です。

・ただし、共同相続人間の相続分の調整法であるために、
「法定相続人以外の人にはこの制度は適用されません。」

・相続人以外の人の貢献(例えば息子の嫁など)に対しては、被相続人が遺言で遺贈を指定するなどして報いるほかはありません。

また、相続人であっても寄与者として認められるためには、

     「被相続人の事業に関する労務の提供または財産の給付」

     「被相続人の療養監護」などにより、

     「被相続人の財産の維持または増加につき、特別な寄与をした者」

でなければならず、

・ただ一所懸命介護をしたとか、精神的に支えたということだけでは、寄与分は認められません。


「寄与分」よりも「遺贈」が優先するので、寄与分は、分割対象財産が存在する場合に限られる。




  寄与分がある場合の相続分の計算方法

事   例 1

・遺産総額1億円 相続人は長男Aと次男Bの2人 長男に寄与分が2,000万円の場合

・遺産総額から寄与分を控除する。

 10,000万円 − 2,000万円 = 8,000万円
(寄与分控除後の遺産額)

 法定相続分

 8,000万円 × 1/2 = 4,000万円

 Aの相続分 2,000万円 + 4,000万円 = 6,000万円

 Bの相続分 4,000万円







  寄与分と遺贈の優先順位

・1つの相続について、寄与分と遺贈がある場合には遺贈が優先される。

・遺産はあくまでも被相続人が残した財産であるので、被相続人の意志が優先される。




  遺産が未分割である場合の寄与分の除外

・相続の申告期限までに相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が相続人又は包括遺贈者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、共同相続人又は包括遺贈者が
民法904条の2の規定により法定相続分に応じて財産を取得したものとして課税価格を計算する(相続税法55条)。

・遺産が未分割の場合には、寄与分を除いた民法の相続分により課税価格を計算する。







  寄与分における問題点


・また、どこからが寄与分か、寄与分を金額に換算するといくらになるのかの判断はとても難しく、相続問題における難問のひとつです。

 介護と寄与分

・なお、介護などに関しては、相続人と実行者が別であっても、寄与分が認められることがあります。

・例えば、妻が夫の代わりに、夫の親の介護を引き受けるということは多くみられます。

・夫の親が亡くなり相続となっても、妻は夫の両親の相続人ではないため、普通に考えると寄与分は認められません。

・しかし、民法の判例・学説には、「履行補助者」という考えがあり、履行補助者の行為は本人の行為とみなすとされています。

・このケースでは、妻が履行補助者にあたり、妻が夫(相続人)に代わって親を介護していたのですから、その行為は
「夫の行為でもあるとみなされて」、相続人である夫の寄与分が認められるでしょう。


家裁における審判

・家裁の審判においては、「要介護2以上の被相続人をすくなくとも1年以上」、自宅で自ら介護していなければ「寄与分」は認められない。

・具体的な金額は、介護保険の報酬などを基に算出されるが、遺産全体に占める割合は
「最大でも2割」としている。

・被相続人の家に無償で同居していると、
「同居の受益」を得たとして相殺される。




  嫁が介護の苦労を相続で報いてもらうには



1.遺言を買いてもらう

・夫が法定相続分を上回る相続ができるように遺言を書いてもらう。

・法定相続人でない嫁に遺言書を書いてもらう。
「遺贈」


2.嫁を養子縁組する

・嫁を「養子縁組」して法定相続人にしてもらう。


3.生命保険に加入してもらう

・嫁が受取人の「生命保険」に加入してもらう。


4.寄与分を主張

「介護日誌」、「領収書」などの記録をしておいて、遺産分割協議において「寄与分を主張」する。

・家庭裁判所の
「調停・審判」により「寄与分」を認定してもらう。




  令和元年改正民法- 民法1050条1項 


・従来は、
「寄与分は共同相続人」にしか認めなかったが、改正法では、令和元年7月1日より「被相続人の親族」に対し「特別寄与料」の支払い請求権を認めた。

・従来の寄与分は、
「労務の提供」だけでなく「財産の出資」も認めていたが、特別寄与については、「労務の提供」だけに限定している。

・この改正により、例えば介護をしていた長男の嫁にも
「被相続人の親族」として寄与分が認められることとなった。

・あくまで無償で療養看護等をしていた場合に限られ、有償の場合には寄与分は認められない。例えば、療養看護をしていた義理の親から生活費を貰っていたような場合は、有償とはならない。

 民法1050条1項

@被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持または増加について、特別の寄与をした被相続人の親族は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭「特別寄与料」の支払を請求することができる。

Aただし、@は相続人、相続放棄をした者、相続人の欠格事由に該当する者、及び排除された者は除く。


民法725条

・親族とは、@6親等内の血族   A配偶者    B3親等内の姻族



事   例

・被相続人甲には、長男A、次男B 長男の妻Cがいる。被相続人甲と長男A、長男の妻Cは同居していたが、長男Aは被相続人甲に先立って死亡し、その後は長男の妻Cが被相続人甲と同居して被相続人甲の介護をしてきた。

・遺産分割において、長男の妻Cは、民法上被相続人の相続人ではないことから、長男の妻Cの介護による貢献にかかわらず遺産分割に関与できない。


・しかし、特別寄与の請求場面では、長男の妻は、@被相続に対し無償で療養介護という労務提供し、A介護事業者に本来であれば支払うはずであった介護費用を支払わずに済んだことで被相続人の財産の維持について B特別に寄与したこととなり C長男の妻は被相続人との関係で親族にあたることから D相続開始の時から6カ月以内、又は相続開始の時から1年以内であれば、相続人である次男Bに対して特別の寄与料を請求することができる。

特別寄与者の相続税の申告

・被相続人から
遺贈により財産を取得したものとして相続税が課税される。また、1親等の血族ではないので「2割加算」の適用を受ける。




  「特別寄与料」の額の決め方 


・特別寄与料の支払いについて、当事者間で協議が整わないとき、又は協議することができないときは、特別寄与者は、
「家庭裁判所に対して、協議に代わる処分を請求」することができるようになった。

特別寄与制度の創設に伴う家庭裁判所における手続規定を設けた

・この家庭裁判所への請求は、特別寄与者が「相続の開始、及び相続人を知った時から6カ月」を経過した時、又は「相続開始の時から1年を経過したとき」は、することが出来ない(民法1050条A)


・特別寄与料の額が確定した場合には、特別寄与者が特別寄与料の額に相当する金額を、被相続人から「遺贈により取得したものとみなして相続税」を課する。

・相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

・相続人が支払うべき特別寄与料の額は、当該相続人に係る相続税の
「課税価格から控除」する。

・特別寄与料の事由が生じたときは、当該相続人は
「更正の請求」をすることができる。




  「特別寄与料」の課税関係


・特別寄与に伴う特別寄与料は、寄与者が相続人に対し請求するものであるが、それは相続人からの贈与とは捉えず
「被相続人からの遺贈」と見做される(相続税法4条2項。)

・寄与者に支払った金額相当は、支払った相続人の課税財産から減額するのが適当であり、寄与者は相続税額の「2割加算の適用対象」になる。


相続税法29条1項、31条2項

・特別寄与料を取得することが決まった特別寄与者の納税期限は、
「特別寄与料の支払額が確定したことを知った日の翌日から10ケ月以内」とされた。





寄    与     
特別の寄与
       
根拠条文
民法904の2 民法1050
請求者
相続人

被相続人の親族
対  象
労務の提供・財産の給付

労務の提供のみ
取得原因
相   続

遺贈(支払い相続人は債務控除)
請求方法
遺産分割

相続人に請求
期間制限
な   し
調停・審判の場合はあり
2割加算
なし(兄弟姉妹以外)

あ   り