生命保険と相続放棄の関係性            



  生命保険と相続放棄の関係性


民法896条 相続の一般的効力

・相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

解              説


・民法などの法律で明文化されている訳ではないが、過去の判例などから
「死亡保険金は受取人固有の財産」とされており、相続財産には該当しない。

・つまり、相続放棄をした者が受け取った死亡保険金は、相続放棄の対象となる「被相続人の財産」ではない。

・そこで、相続放棄をしても生命保険金は受け取ることができる。


相続放棄をしても受け取ることが出来る生命保険金

・相続放棄をしても受け取ることが出来る生命保険金は、被相続人本人が
「保険契約者」「被保険者」となっている生命保険契約から支払われる死亡保険金がその対象となる。

・死亡保険金と一緒に支払われる配当金なども含んで死亡保険金とされる。

・年金保険などで承継受取人として年金を継続して受け取ることが出来る年金受取人を定めている場合なども、この
「年金を受け取る権利」は、相続放棄をしても死亡保険金と同様に受け取ることが出来る。

入院給付金

・しかし、被保険者が死亡前に入院等されており、死亡後に受け取ることとなった入院給付金などは、本来被保険者本人が受け取ることになっているため、
「被相続人の相続財産に該当」し、相続放棄をすると受け取ることが出来ない。




  相続放棄した者が受け取った生命保険金の税法上の取扱い


・相続放棄をした者が受け取った生命保険金については、他の相続人が相続した相続財産と合算し、相続税計算をすることになる。

・例え相続人全員が相続放棄をして死亡保険金を受け取った場合にも、この受け取った保険金額を相続財産として相続税計算をすることになる。

・この際の相続税の計算は、非課税限度額に法定相続人を乗じた額として計算するので、相続放棄をした者がいない場合と同様になるのか?。

・下記の事例は、相続放棄した相続人が1人の場合の計算だが、相続人全員が相続放棄した場合には控除額はどうなるのか分からない。



2割加算となる場合

・相続放棄をした者が一親等の血族・配偶者である場合は、受取生命保険金に対する各自の支払う相続税額への2割加算はないが、代襲相続人となった孫などが相続放棄をした場合には
「代襲相続人として財産を取得したことにはならない」ので、2割加算をする必要がある。




  相続放棄した場合の死亡保険金の非課税限度額


事   例

・被相続人Aが死亡し、各相続人が下記のように生命保険金を受け取った。

・配偶者B・・・・2,000万円   ・長男C・・・・・1,000万円

・次男D
(相続放棄)・・・・・・2,000万円

解              説


相続税法12条 相続税の非課税財産

・相続税法12条5項イにおいて相続人一人につき500万円の非課税限度額を規定している。



・死亡保険金の非課税限度額  500万円×3人=1,500万円

各相続人の保険金の非課税限度額

  配偶者B・・・・1,500万円×2,000万円/3,000万円=1,000万円

  長男C・・・・・・1,500万円×1,000万円/3,000万円=500万円

  次男D・・・・・・非課税限度額はなし

・ネットで見ると、上記のように書いてあるものもあるし、また、非課税限度額は1,000万円と書いてあるものがある。

控除額が1,500万円とするペ-ジ    ・控除額が1,000万円とするペ-ジ


・私見では、控除できる金額は、1,000万円だと思う。何故なら全員が相続放棄した場合の計算が想像できないからである。