単純承認と限定承認
「単純承認有無」の判断 |
民法922条 |
※被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ。 ・例えば、被相続人が会社を経営しており「会社の借金の連帯保証人」になっているような場合、会社が倒産し連帯保証が実現した場合に備える。
・被相続人の「準確定申告」において不動産については、所得税法59条に基づく譲渡所得課税の申告納税をすることになるが、限定承認をしないと、債権者に不動産を含めた財産を抵当の形にとられた上に、不動産を時価で債権者に譲渡したものと見做されて、「譲渡所得課税の申告納税」をすることになってしまう。 ・将来を見越し、限定承認による不動産の譲渡所得課税を免れる方法としては、「生前贈与」と「相続時精算課税制度」がある。
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相続債権者・受遺者に対する公告及び催告 |
・相続人が複数の場合には、家庭裁判所は相続人の中から「相続財産の管理人」を選任する。 ・上記公告は、限定承認の「受理審判」があった後5日以内、共同相続の場合は、相続財産管理人の選任後10日以内にこれを行う。 ・そして、一定の期間内に相続債権者及び受遺者から「異議の申し立て」がなければそれで完了します。 ・3ケ月以内に、限定承認するか否かの判断が難しい場合は、「期間伸長の申し立て」の請求によって、家庭裁判所の審判により期間を伸ばすこともできますが、家庭裁判所では、「遺産の内容、所在場所相続人の居住地等の状況を考慮」して、期間伸長の必要性や伸長期間などを判断します。
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催告期間中の弁済拒絶権 |
期限前の債務等の弁済 |
受遺者に対する弁済 |
相続の承認及び放棄の撤回及び取消し |
1.被相続人に対する譲渡所得税 |
・これは、被相続人の所有期間中における資産の値上がり益を被相続人の所得として課税し、これに係る「所得税額を債務として清算する」ことにより、限定承認をした相続人が相続財産の限度を超えて負担することのないようにとの趣旨で規定されているものである。 ・つまり、みなし譲渡所得税も、「相続における債務」としてみてもらえるので、「相続財産から控除」してもらえる。
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2.相続人に対する譲渡所得税 |
※相続財産が不動産等で換価を要するものであるときは、原則として「競売」に付さなければならないとされているが、実際には、「任意売買」により換価されているケ−スの方が多い。 ・相続財産の換価による譲渡所得税については、「譲渡資産の取得費は、相続開始時の時価」とされるため、譲渡所得税は算出されない。 ・理論的にはそうであるが、被相続人の準確定申告における譲渡所得税の計算において、実際に譲渡した訳ではなく、相続人が想定した時価で譲渡したことにする「みなし譲渡」に対しての準確定申告なので、上記のように相続人が実際に当該資産を売却した場合には、想定した時価と多少なりとも異なるはずである。 ・従って、その差額に対して譲渡損益が生じるのが普通である。譲渡損が生じた場合には譲渡損はなかったものとみなす、と規定している。
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・ただし、限定承認者は、家庭裁判所が選任した不動産鑑定士の評価に基づき、「先買い」することができるので、不動産鑑定士の評価した金額で「居住用財産を買い戻す」ことができる。 |
@限定承認をした場合は、遺産の全てを売却したものとみなしての譲渡所得課税が行われてしまいます。
A 居住用資産を譲渡した場合の特別控除などの特例が受けられないことになります。
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・限定承認により、「時価相当額で譲渡」があったものとみなして「みなし譲渡所得課税」が行われるが、相続人が、当該不動産等を譲渡したことにより損失が生じたとしても「損失は生じなかったものとみなす」旨が規定されている。(租税特別措置法第31条第1項、第32条第1項) |