姻族関係終了届・死後離縁届出書             



  姻族関係終了届


・夫婦の一方が死亡しても、遺された配偶者と死亡者の親族(配偶者の兄弟達)との姻族関係は終了しない。しかし、遺された配偶者が死別後「婚姻関係終了届」を、届出人の本籍地または所在地のいずれかの市町村役場に提出すれば、届けた日からその婚姻関係を終了させることができる。民法728条)


・姻族関係終了届を出す最大のメリットは、
「亡き配偶者の親兄弟の扶養義務がなくなる」ことです。なお、姻族関係終了届を提出したからといって、相続した遺産を返す必要はありませんし、遺族年金もこれまで通り受け取れます。


・配偶者の死後、配偶者の血族との縁を切りたい場合は、
「姻族関係終了届」を提出することにより、 死亡した配偶者の父母や兄弟姉妹などの「扶養義務もなくなる」が、死亡した配偶者の遺産を相続していたとしても、返却する必要はない。


相続権は子に引き継がれる

・配偶者と配偶者の父母との縁は切れても、配偶者の子供
(配偶者の父母の孫)との縁は切れませんので、配偶者の父母からの相続権もあります(代襲相続は可能)。



  養子縁組解消における問題点

事    例 

・例えば、A夫妻の娘Xが婿Yを貰い、YがA夫妻の養子になったとする。その後、XとYが離婚した場合に、A夫妻が健在であればYは、A夫妻とも養子縁組を解消することができる。

・しかし、既にA夫妻のうちの夫が死亡していた場合には、A夫妻の妻の方とは
「離縁届け」の提出により、養子縁組を解消することができるが、夫とは養子縁組は切れていない。

・つまり、戸籍上YはXと兄弟の関係になる。

解        説


・事例のように、婿YはA夫妻と養子縁組を結んだが、法律上は、A夫妻の夫と妻と別々に養子縁組を結んでいるので、娘Xとの離縁に伴い、A夫妻の妻とは
「離縁届け」により養子縁組を解消することとなるが、A夫妻の夫とは、養子縁組は続いたままになっている。


・既に死亡した「養親との離縁」をするには、家庭裁判所に「死後離縁届書」を提出し、許可をもらうことにより可能である。



  「姻族関係終了届け」の有無による株式評価の違い

 事    例 2

・A社株式(発行済み株式数10,000株)の株主の状況

 甲6,000株  甲の子1,000株  甲の妻の弟(乙)3,000株

 全て普通株式で、1株につき1個の議決権を有する。なお、甲は妻と死別している。

・A株式の相続税評価額
    原則的評価  20,000円   特例的評価額   500円

・乙の相続税の課税関係

    乙の相続人    長女1人
    乙の財産      A社株式 3,000株  
    その他の財産   3億円

解        説


姻族関係終了届け有無の比較
                                                     単位 万円
姻族関係終了届の提出が無い 姻族関係終了届の提出が有り
A社株式 6,000 150
その他の財産 30,000 30,000
相続財産の合計額 36,000 30,150
相続税 10,300 7,960

・甲が「姻族関係終了届け」を提出していた場合には、乙と乙の長女は、A社における
「同族株主以外の株主」に該当し、特例的評価方式によって評価することができる。

・しかし、姻族関係終了関係の届出が提出されていなかった場合には、乙が死亡し乙の長女がA社の株式すべてを相続することとなると、乙の長女は
「甲の3親等内の姻族」にあたることになるから、A社の「同族株主に該当」し、かつ、取得後の「保有議決権割合が5%以上」になることから原則的評価方式によって評価することとなる。



  姻族関係終了届け

事    例 3

・Aは、夫の死亡後も夫の父母と同居してきた。

・Aは、同族会社の代表者であった義父甲から、遺贈による同社株式を取得した。姻族終了届けを提出している場合と提出していない場合とでは、どのような違いが生ずるのか。

解            説


・夫婦の一方が死亡した場合には、生存配偶者と死亡配偶者の血族との姻族関係が終了することなく継続する。

戸籍法96条

・この姻族関係を終了するには、
「姻族関係終了届出書」を市区町村に提出することとされている。


・「姻族関係終了届出書」を提出していれば、その届出の日から姻族関係がなくなるので、「同族株主の判定から除外」される。