個人年金受給権の相続評価            



相続税法24条は、年金を受取る権利の評価について規定している。


・生命保険は健康状態によっては加入できない場合も多くあるのに対し、個人年金の場合は健康状態を問いません。生命保険には加入してこなかったが相続税対策をしたい、でも今からでは保険に入れない。そんな方には個人年金は有力な武器になるかもしれません。


平成22年4月から改正

※この優遇策を廃止する相続税法改正が、「平成22年4月から成立」し、4月1日以後に死亡した相続税申告については、
「解約返戻金」が相続評価となる。

・下記の規程は、平成22年4月以前の取扱いになる。



  個人年金受給権の評価

事     例

・被相続人である父親が保険契約者となって、
被保険者(保険を掛けられる人間)を息子とする。父親が70歳になり年金として受取っており、その状態で死亡した場合には、相続税法上の評価額は、年金の受給権としてのものになる。

・父親が、息子を被保険者として月に10万円の年金を30年間受取れる一時払いの個人年金保険
(受給総額3,600万円)に加入した。父親が死亡したときの相続評価はどうなるのか。

解              説


・父親が年金受給直後に死亡した場合、受給権は遺族が相続することとなるが、その相続評価は受給総額の30%の
1,080万円で済むこととなり、大幅な評価減が可能である。


・年金が有期型であれば、「残年数で評価」され、終身型であれば、「受給権を相続した息子の年齢」によって評価されることとなる。


・事例の場合には、「有期型」に該当するため、下表の用に30年間の確定年金を受給できる場合に該当し、30%を受給総額に乗じて評価する。

  3,600万円 × 30% =1,080万円



確定年金の場合の評価金額

・年金発生後に加入者が死亡した場合で、例えば確定年金で受け取る場合は、まだ年金の支払いを受けていない残存期間に応じ、年金受取総額に下記の割合をかけたものが相続税評価額となります。

* * * 確定年金の場合 * * *
 残存期間   評価割合 

・5年以下

70%

・5年超〜10年以下

60%

・10年超〜15年以下

50%

・15年超〜25年以下

40%

・25年超〜35年以下

30%

・35年超

20%

終身年金の場合の評価金額

・終身年金で受け取る場合、受給権を取得したときの被保険者の年齢に応じて、年間に受取るべき金額に下記の倍数をかけたものが相続税評価額となります。

* * * 終身年金の場合 * * *
年    齢   倍    数

25歳以下

11倍

25歳超〜40歳以下

8倍

40歳超〜50歳以下

6倍

50歳超〜60歳以下

4倍

60歳超〜70歳以下

2倍

70歳超

1倍

※この優遇策を廃止する相続税法改正が、
「平成22年4月から成立」し、4月1日以後に死亡した相続税申告については、「解約返戻金」が相続評価となる。


年金特約の存在

・終身保険や定期保険の死亡保険金を年金として受給する場合、「受給権の評価減を受けるには」、相続発生前に「年金特約」を付けておくことが必要であった。

・相続前に特約をつけると、年金の受け取りにかかる「雑所得」の税負担が重くなる。

・平成22年4月の改正により、受給権の評価減という利点がないのであれば、「事前の年金特約」をはずしたほうが、税負担の軽い「雑所得」が適用され有利である。

・相続開始後に
「年金受け取り型」を選択することもできるので、評価減のメリットがなければ、「事前の年金特約」をつける必要がない。



  最高裁における個人年金受給権判決

・平成22年7月6日、最高裁は
「年金型生命保険」で、一定割合(今回のケ−スでは60%)が相続税の課税対象とされた上に、毎年受給する年金部分に所得税が課せられているのは、「二重課税であるから違法」との判決を下した。

・最高裁は、1年目の年金に課された所得税を「違法な二重課税」と判定した。2年目以降については、運用益部分に所得税が課せられることになるが、具体的な計算方法には触れていない。

・「個人年金保険」において、「年金の受け取り開始後に契約者が亡くなり、受給権を遺族が相続」して年金を受取った場合には、相続税と所得税の課税対象となっているが、この最高裁判例により、相続人が1年目に受取る年金に所得税を課するのは、違法と言うことになる。「学資保険」についても同様。